甲援隊血風録
初陣!京都まつり


時は二〇〇四年(平成十六)九月十九日。
「近畿に甲冑の輪を」そんな趣旨の元に誕生した甲援隊―。
その甲援隊の初陣に選ばれし戦場は京の都の「京都まつり」。全国より集いし甲冑武者たちが都大路に集結し、勇ましく行進する。

【部隊編成:甲援隊/雑賀甲冑隊/客将の皆様】
写真協力【山内兵馬殿/元政殿/孫市の街殿/肥前守左馬之助殿/富楠殿/真下昌景殿】
第一話


「一海さん、声が優しい^^」説明時に出たお言葉です^^;
そうなんです。こんなごっつい顔していますんで、怖い声をしているように思われがちなんですが、滅茶苦茶声が高いんです^^;
 これは雨になる―。
 参陣せし誰もが暗澹たる気持ちになっていた。
 九月十九日。それは熱き思いを抱いた二十四名の武者たちにとって聖なる日であった。ある者は初陣を夢見、またある者は歴戦で鍛えた腕を都人に披露のために心を燃え滾らせていた。
 この日の朝。それまであやしかった雲行きが一転した。何と雲が見る見る間に晴れていったのだ。
「南無八幡大菩薩!」
甲援隊の総大将・源参国は思わず天を仰ぎ、感嘆の声を挙げた。これで甲援隊の初陣は飾れる。また各地より馳走せし武者たちにも報いることが出来る―そんな思いから出た叫びであった。その思いは傍らにいた副長の横内殿も同様であった。そうこうしているうちに喜ぶ二人の前に次々と武者たちが現れた。甲援隊と同盟関係にある辰之進殿率いるゆるり甲冑隊、そして雑賀孫八殿率いる雑賀甲冑隊が援軍に駆けつけた。その他にも鎮西からは歴戦の強者・惟新殿、信州からは甲冑作りの名手・ほにゃぢ殿、坂東の荒武者・肥前守左馬之助殿、越前よりは真下昌景殿、畿内よりはかつて参国と戦場を共にした山内兵馬殿といった名うての名将たちが甲援隊の陣へと入っていった。
「副長、これで戦は勝ったのう!」
「隊長、努々ご油断されるな。まだ戦は始まったばかり・・・」
「うむ。そうであった」
「しかし・・・」
と副長は少し顔をゆるめつつ呟いた。
「多士済々とはまさにこのこと。天も我らに味方をいたしておる・・・。油断大敵ではあるが、勝算は大いにありまする」
「実にも」
と参国が笑うと鞠雄殿も快活に笑った。こうして甲援隊は隊士の一人・武尊殿の構えし館へと入っていた。ちなみに武尊殿はこのたびの戦で陽となり影となって甲援隊を支えた好漢である。参国は館へ入りながら天が味方したのは実は武尊殿の働きを愛でたためではないか、と心内で呟いた。まさに甲援隊の初陣に武尊殿の活躍あっての実現であった。

 一人二人と集い始めると武尊殿の館はまさに戦場であった。参国と鞠雄殿は言うまでもなく、各々が活躍し、出陣の刻限までには全てがその準備を終えた。多忙にも関わらず参国は抜け目なく武者たちの装いに目を向けていた。特に目を奪われたのは肥前守殿の大三日月の前立てや、甲援隊の姫武将・左京亮殿のまとう陣羽織、そしてすべて己が手で作ったというほにゃぢ殿の甲冑であった。いずれも名品ばかりであったが、惜しむらくは参国には全くといって良いほど時がなかった。もし叶うならば次の戦場ではもっとゆるりと名将たちと話をしたいと、願う参国であった。この時、参国は家宝たる赤糸縅の大鎧を身に付けた。やはり京の都で初陣を飾る以上は式正の鎧でなければならぬ、という思いからであった。だがこれが後に参国を苦しめることになろうとは予想だにしなかった。

「隊長殿、皆にお下知を―」
とようやく大鎧を身に纏った参国は休む閑もなく諸将にこの日の行程を説明した。諸将はよく参国の心を汲んでおり、皆心を一つにして足を進めた。目指すは都大路の一つである御池通―色とりどりの二十四名の武者たちが勇ましく出陣した。刻限は午の刻(12時)であった。

さあ、いよいよ出陣!街中―特に京の町を甲冑で歩くのは最高♪

で、横内殿とのツーショット。この時点でダウン寸前でした。トホホ^^;;

今回最も活躍されました武尊殿です。この方の力なくして京都まつり参陣はありませんでした^^

新撰組も張り切っています!!
 いざ出陣!
 武田の二十四名将を思わせるような平成の武者たちは行進開始の場所へと向った。
 武尊殿の陣所より歩くこと一刻ほどで、ようやく辿りついた。その間、すたーばっくすなどでくつろいだり、また新撰組の諸隊士と会うなど、武者たちの心び高まりは頂点を迎えた。
 だが―。参国の体には異変が起きていた。良天候になったのはよかったのだが、湿気と熱気の為に脱水の症状を起こしかけていたのだ。その尋常ならぬ様子に気付いたのは左京亮殿であった。
「茶をお持ちいたしましょう」
「か、かたじけない・・・」
と参国は満面に汗を掻き全てを託した。
 だが―。天の悪戯か、無情にも出陣の号令が発せられてしまったのだ。
 万事休す。参国は心内でもはやこれまで、と諦めつつあった。だが、まさに戦場へと足を向けた瞬間、待ちに待った水が到着したのだ。
「かたじけなし!」
参国は感謝しつつ、浴びるようにして茶を一気に飲み干した。こうしてまずは最大の危機を乗り越え、戦場である御池通へと出陣していった。
つづく